おもしろ“クツ創家”と浅草で!玖珠生まれの靴職人&アーティスト|『靴郎堂本店』の佐藤いちろうさん

今回ご紹介するのは『靴郎堂本店』の屋号名で活動する佐藤いちろうさん。

「玖珠町出身の面白い人がいるよ、東京に。」

そう教えていただいたのは、以前インタビューをさせていただいた「福⑧堂」の吉武さん

玖珠町出身のいちろうさんは、靴職人としてのお仕事のほか、アーティストとして「履物」をテーマにした作品の制作や全国各地でワークショップなどを開催しているとのこと。

靴職人?アーティスト?

なんだかすごそうなお方。さてどんな方なんでしょう?

東京へ行く機会があればぜひお会いしてみたい!行く機会があれば…

そう考えておりましたら、すぐにその機会がやってきました(笑)

浅草で待ち合わせ。

いちろうさんオススメのお店でお話を伺いました。

主役がブレブレですが…焼き鳥ならぬ「焼きとん(豚)」のおいしいお店。

こちら(東京)ではどんなことをしているの?

ーいまこちらでは何を?

「今は靴を製造する会社に勤めながら、その傍らで“履けない靴”を作ったりしてますね。」

???

靴を作っているのに履けない靴?履けない靴ってなに?

いちろうさんがつくる「履けない靴」とは…

人間にとって身近な道具である「履物」をユーモラスに扱った作品や、物の大切さを考える作品。消費社会の中での大量化するモノの価値に意義を唱えたもの遊びの履物。遊び心やアートの力が生活していく上で心を豊かにする存在であることを目指しています。

「靴」をつくることを続ける中で、いちろうさんの思いを作品として発信しているようです。どんな作品かというと…

「SHOE LODGE」2016年 六甲ミーツ・アート 芸術散歩2016

「SHOE TENT」2014年

「DUO League Trophy」

靴を知っているからこそ、ものづくりをしているからこそ生まれる作品。見た人、触れる人がワクワクする作品ですね。

なぜ「クツ」の道へ?

高校卒業まで玖珠町で過ごしていた「いちろうさん」の当時のお話を伺ってみました。

ーどんな子ども時代を過ごしてた?

「サッカーが好きで、中学生の時にちょうどJリーグが始まったのもあってずっとサッカーしてましたね。でも中学校にはサッカー部が無くて、バスケ部に入りながら、部活以外の時間でグラウンドの片隅とか田んぼとかで友達と泥だらけになりながら。」

その当時に、いまの靴職人としてのキッカケが。

「サッカーが楽しくてほとんど毎日やってたんですけど。そうすると運動靴じゃ物足りず、スパイクが欲しくなってきたんです。でも、運動靴と比べると結構な値段なんですよね…。スパイクの中でも比較的安い人工皮革のものじゃなくて、当時流行ってたカンガルー革とかの本革製が欲しくて。やっと手に入れたスパイクはホント大事にしてて、一生懸命手入れしてましたね。」

私も同年代でサッカーをしていましたので、よくわかります(笑)

「“キングペレ”ってスパイク知ってます?本当はアレが欲しかったんですけど、当時めちゃめちゃ高かったじゃないですか。で、夏休みの工作で憧れのスパイクを紙で作ったんですよ。履いてみたらすぐ壊れちゃったけど(笑)」

スパイクの中でも流行りとかありましたねー。あったー!とか、そうそう!って同郷ではないものの同世代トークで盛り上がっちゃいました。

ー当時からものづくりに興味が?

「好きだったかもしれませんね。スパイクを手入れする中で革に興味を持ったり、靴の構造を意識して工作してみたり。それと、フェルトのぬいぐるみづくりにも一時期ハマってて(笑)。UFOキャッチャーで欲しいもの(当時あったストリートファイターⅡのデフォルメぬいぐるみ)があったんだけど、それが取れないときは自分で作ってみたり。あと好きな女の子のためにつくったり。気持ち悪いよね(笑)」

あったあった、ストⅡのやつ(笑)懐かしー。

「ものづくりに興味はあったけど、将来を考えたり、特に意識はしてなかったかな?それよりも勉強が全然できてなくて、高校進学をどうするかで…それどころじゃなかったかも(笑)」

ー高校進学後は?

「いやー、遊んでばかり(笑)。ものづくりのことなんかすっかり忘れてましたね。」

ーその後の進学とか就職とかは?

「高2ぐらいのとき、将来を考え始めた時にやっぱり“ものづくり”したいなーって。でも“ものづくり=美大”のイメージがあったので、美大目指して美術部に入って。そこで今の基礎は学んだ感じですね。でも結局は、文化服装学院(東京)に進学しました。もともと服が好きだったこともあって。それと中学生の時のサッカースパイクがきっかけで靴を作ってみたいとも思ってて。」

「靴職人」としてのスタートと「アート」としてのクツ

文化服装学院を卒業したのち、靴企業メーカーの企画デザイナーとしてスタート。

「2年ぐらい勤めていろいろ勉強させてもらってたんですけど、迷ってた時期があったんですよね。その会社では路面店もあって、店舗に立ってたりもしてたんですけど。たまたまそこにあった岡本太郎の『今日の芸術を読む』って本を読んだときに、内容はよくわかってなかったけど“芸術”がものすごく気になって。靴デザイナーとしての仕事はしてたけど、美術・芸術のことがずっと気になってたのかも。」

そして、いちろうさんは仕事を辞めて「美術・芸術」を学びたいと思ったそう。

「学びたいとは思ったものの、学費もないし、どうやって学ぼうか。美術館とかで作品に触れられる学芸員もいいなーって思ってたけどなれないですからね。でもたまたまある美術館で監視員のアルバイト募集が出てて。すぐに応募して“美術館監視員のアルバイト”を始めました。そこでは、お客さんから絵のことも聞かれるので、美術とか歴史についても知識が必要だったし、自分なりに勉強したり、仲間といろいろ語り合ったり。そのことが大きかったですね。」

そんな新しい生活をスタートさせたいちろうさん、ある出会いがきっかけで「アーティスト」としての道をスタートさせます。

「美術館のアルバイトをしているとき、その職場に、ある芸術祭を運営している方がいらっしゃって、その方に“住まい”を紹介してもらったんですよ。そこは昔ながらの長屋がある古い町なんだけど、芸術とか建築とかを学んでいたり活動している人たちがたくさんいて、その人たちと出会ってより深く芸術と関わるようになりましたね。その人たちの刺激もあって、自分なりの作品制作をはじめました。」

当時20代前半、いろいろ考える時期ですよね。

ーなぜ「靴」の作品なのか?

「当時つくっていた作品は、自分が何なのかを絵で表現していたんですよね。で、いろんな人に見せたりしてたんですけど。その作品を見たある人から〈靴から抜け切れていない〉〈靴から離れるべきではない〉と言われ続けて、そこで『靴』に関する作品づくりに。でも、せっかくなら誰もやってないような面白いことをやらなくちゃ!と思って『履けない靴』『面白い靴』をつくり始めました。」

そうしていくうちに、作品づくりと並行して「靴」についてもより深く考えて接する機会が増えたそう。この時、母校である「文化服装学院」の講師も務めています。

ーその後の活動は?

「初めて声がかかったのは、とある美術館から。小中高生を対象としたワークショップでこれまでつくっていた作品『履けない靴』をベースに身近な素材で靴をつくる内容でしたね。美術館からのオーダーでもあったので、それがきっかけで他の作家さんとかアーティストと知り合う機会も増えて、芸術祭に参加したり一緒に作品制作をしたり。」

このとき全国各地で芸術祭が始まりだした頃でもあり、アーティストとしての活動の場も広がっていた様子。学校で学ぶというより、いろんなアーティストとの出会いが「靴郎堂本店」佐藤いちろうさんを作り上げていったんですね。

全国でワークショップを展開

いまでも靴職人としての仕事と並行して続けているいちろうさんのワークショップは全国各地へ。

ワークショップ正装スタイルのいちろうさん

ーワークショップって定義が広いですよね?いちろうさんのワークショップってどんな感じ?

「ワークショップって“決められたモノの手づくり教室”のイメージが強かったりもするんですけど。出来上がったモノの結果や活用目的を目指すんじゃなくて、作る過程とか工作中の気付きとかその場の雰囲気とか、答え(完成品)はあるけどそこに至る方法はこだわらず、とにかく楽しんでもらうことを大切にしてますね。とくに子どもたちを対象にすることが多いんですけど、子どもたちの発想からは意図しないような面白いものが生まれ、それぞれの方法や考えで答えを出そうとするんですよね。だから絶対に無駄な手出しはしたくないし、それぞれの答えに向かって楽しんでますからね。答え(完成品)は添え物として、そういった時間を過ごしてもらうことがワークショップだと考えています。」

この手法のワークショップって実践するのは実は難しかったりするもの。ついつい口を出したり手を加えたりしがちですが、いちろうさんのワークショップは子どもたちの楽しみを引き出すことが評価され、全国各地の学校やイベントからオファーを受けています。

そして、モノを作るということに加え、モノ(靴)の構造や仕組み、皮革や素材のことなども伝えています。素材や仕組みを知って身近な製品や商品を作り出す工程を一貫して伝えることは、子どもたちにとっても貴重な機会になりますね!

ー作品づくりやご自身の活動にワークショップが与える影響は?

「逆にヒントを貰えることが多いですね。子どもたちと接する機会が増えると予想外の発想や発見に出会えることが多くて、作品にも大きく影響してますね。ガムテープの靴もワークショップから生まれたワークショップのコンテンツですし。」

ワークショップを通じて、自身の作品づくりへ。そしてワークショップへ。ご自身の技術や経験、知識に加え、子どもたちと一緒に「靴郎堂本店」が進んでいるようにも感じますね。

おわりに

正直、今回の記事だけでは全然足りない…。幅もジャンルも思いも小ネタも多すぎて(笑)

いちろうさん:
「美術・芸術してる感は強く出したくないんですよね。これからは与える側・生み出す側として、靴のことやモノづくり、アートをより身近に感じてもらえるように続けていきたいですね。」

東京と玖珠町、エリアを超えて楽しい機会を一緒に生み出したい。そう思える楽しいお方でした。

玖珠町で特別展示&ワークショップを開催!

『シュー・ピクニック at KUSULAND』を2019.11.18〜12.29に開催。
いちろうさんのワークショップも!詳しくはこちら↓


https://kusuland.com/archives/feature-articles/shoepicnic_kusuland2019

 

 

関連記事一覧

PAGE TOP